- 投稿日
- 2025.05.17
春は97回、夏は106回の歴史を数える全国の高校野球大会。
逆転や連続優勝など、各時代のドラマがファンたちを魅了してきた。
各激戦区を勝ち抜いてきた高校を分けた時、推薦や野球留学のある私立高校に対し、制約のある公立高校の台頭も目覚ましいが、その公立高校の優勝確率は何%になるのか。
公立高校、私立高校の違い
ちなみに国立勢の優勝は残念ながらゼロ。
史上唯一国立勢として出場を果たしたのが、1946年夏(第28回)の東京高師付中(現・筑波大付。茨城)。
この時にベスト4まで進出したが、現在もこれが国立勢唯一の出場となっており、優勝には至っていない。
ここでは国立勢を省き、まず公立高校と私立高校の違いについて見ていきたい。
設置者 | 説明 | 生徒 |
---|---|---|
公立 | 都道府県や市区町村が運営する高校。 主に税金で運営。 |
県内から入学 |
私立 | 学校法人などが運営する高校。 民間が設立・運営。 |
県内外から入学 |
公立と私立の違いは、当然ながら公立は地方自治体、私立は民間によって運営されている点が一番にある。
地域や時代で条件が異なるため一概に言えないが、野球部にフォーカスすると、公立は近隣の県内生徒で構成されるのに対し、私立は県内外の推薦や特待生の優良な選手が入部できる。
資金力にも差があることが多く、道具や練習環境も私学は恵まれているため、もとより私立の方が条件が良く、チーム力を上げやすいのは致し方ないところだ。
公立最後の優勝は春・清峰(長崎)、夏・佐賀北(佐賀)
それが顕著に出てか公立最後の優勝は、春は2009年の清峰(長崎)、夏は2007年の佐賀北(佐賀)。
春は16年前、夏は18年前のことで、以降はすべて私立が優勝している。
その前となると、春はさらに14年前(1995年)の観音寺中央(現・観音寺総合、香川)、夏はさらに11年前(1996年)の松山商(愛媛)までさかのぼる。
春夏ともに30年で2校ずつとなるため、公立にとっての全国優勝は近年かなりの難関になっているということだ。
ただこれは時代の影響が大きく、古くは公立の優勝、躍進が多かった事実がある。
古くは公立が台頭 分岐点は1980~1990年代
出場校数の割合を見ていこう。
年代別設置者別 出場校数の割合
年代 | センバツ(春) | 選手権(夏) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
公立 | 私立 | 国立 | 公立 | 私立 | 国立 | |
1910年代 | – | – | – | 83.9% | 16.1% | – |
1920年代 | 71.1% | 28.9% | – | 73.3% | 26.7% | – |
1930年代 | 68.1% | 31.9% | – | 71.8% | 28.2% | – |
1940年代 | 77.7% | 22.3% | – | 82.1% | 17.0% | 0.9% |
1950年代 | 73.7% | 26.3% | – | 74.6% | 25.4% | – |
1960年代 | 62.1% | 37.9% | – | 62.2% | 37.8% | – |
1970年代 | 56.9% | 43.1% | – | 59.2% | 40.8% | – |
1980年代 | 48.4% | 51.6% | – | 53.9% | 46.1% | – |
1990年代 | 39.9% | 60.1% | – | 40.9% | 59.1% | – |
2000年代 | 36.9% | 63.1% | – | 32.9% | 67.1% | – |
2010年代 | 25.9% | 74.1% | – | 24.9% | 75.1% | – |
2020年代 | 22.4% | 77.6% | – | 21.9% | 78.1% | – |
計 | 48.5% | 51.5% | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0.03% |
春は1970年代まで、夏は1980年代まで公立の方が出場校数の過半数を占めていた。
高松商(香川)や岐阜商(岐阜)、中京商(愛知)などが台頭し、それまでの大会をリードしていたが、徐々に私立の割合が増え、春は1980年代に、夏は1990年代に割合が逆転。以降、私立が過半数を占めるようになった。
私立の割合は年々増え、2010~2020年代には私立の割合が75%を超え、公立の割合は1/4を下回ることとなった。
果たして公立高校の甲子園での優勝確率は?
公立は出場の割合自体が下がっているため、優勝確率が下がるのは避けられない。
そこで年代別に大会で優勝する割合を見てみよう。
年代 | センバツ(春) | 選手権(夏) | ||
---|---|---|---|---|
公立 | 私立 | 公立 | 私立 | |
1910年代 | – | – | 75.0% | 25.0% |
1920年代 | 66.7% | 33.3% | 70.0% | 30.0% |
1930年代 | 60.0% | 40.0% | 40.0% | 60.0% |
1940年代 | 80.0% | 20.0% | 80.0% | 20.0% |
1950年代 | 60.0% | 40.0% | 70.0% | 30.0% |
1960年代 | 60.0% | 40.0% | 30.0% | 70.0% |
1970年代 | 40.0% | 60.0% | 50.0% | 50.0% |
1980年代 | 50.0% | 50.0% | 30.0% | 70.0% |
1990年代 | 10.0% | 90.0% | 20.0% | 80.0% |
2000年代 | 10.0% | 90.0% | 10.0% | 90.0% |
2010年代 | – | 100.0% | – | 100.0% |
2020年代 | – | 100.0% | – | 100.0% |
計 | 38.5% | 61.5% | 37.9% | 62.1% |
通算では私学の優勝が春61.5%、夏62.1%。公立の優勝も4割近くの数字になるが、近年を見ればそうはいかないのが見て取れる。
1990年代から春夏ともに80~90%、2010年代以降は100%で私立が優勝しており、公立の付け入る隙がない状態になっている。
4校に1校(約25%)は出場しているにも関わらず、なかなか頂点まで上り詰めることができていないのである。
決勝進出なら可能性あり 公立勢の躍進に期待
優勝からは遠ざかっているが、決勝進出ではゼロという訳ではない。
年代別 公立高校の準優勝
年代 | センバツ(春) | 選手権(夏) |
---|---|---|
1910年代 | 0 | 3 |
1920年代 | 2 | 4 |
1930年代 | 5 | 7 |
1940年代 | 4 | 5 |
1950年代 | 8 | 8 |
1960年代 | 5 | 8 |
1970年代 | 5 | 7 |
1980年代 | 3 | 4 |
1990年代 | 3 | 3 |
2000年代 | 2 | 0 |
2010年代 | 2 | 1 |
2020年代 | 0 | 0 |
計 | 39 | 50 |
2020年代ではまだ決勝に進出した公立は出ていないが、2010年代に準優勝を果たしている高校もある。
春は高松商(香川)と習志野(千葉)、夏は金足農(秋田)といった歴史ある高校が決勝に進出しており、健在であることを強く印象づけた。
時代が変わり、戦力偏重の傾向は否定できないが、条件や環境に屈せず、打倒私学を掲げて戦う公立勢の魅力も大きい。
逆境をはね返し、悲願の瞬間を目指しての激突に期待していきたい。